血をサラサラにする薬を飲んでいる場合の抜歯

こんにちは。野原歯科医院院長の野原行雄です。

本日は、血をサラサラにする薬を飲んでいる場合の抜歯 についてお話しします。

心臓や脳の病気の治療で、いわゆる『血をサラサラにする薬』が処方されることがしばしばあります。

血をサラサラにする薬とは、『抗血小板薬』『抗凝固薬』とよばれる薬です。

どちらも血液を固まりにくくする薬=血を止まりにくくする薬なのですが、抜歯のとき、血をサラサラにする薬を中断することはほとんどありません。

血を止まりにくくする薬を使っていて、抜歯しても大丈夫なのかと心配になる方も多く、しばしば質問されます。

そこで今回は、血をサラサラにする薬を飲んでいる場合の抜歯についてお話しします。

血をサラサラにする薬について

いわゆる血をサラサラにする薬は、血を固まりにくくします。

固まりにくくすることで、血栓という血管を塞いでしまう血の塊ができないようにするのが目的です。

血栓を予防したい血管が動脈か静脈かによって、血をサラサラにする薬は『抗血小板薬』『抗凝固薬』の2種類に分けられます。

抗血小板薬

抗血小板薬は、主に動脈の血栓の治療に使われます。

具体的には、心筋梗塞や虚血性脳血管障害という脳の血管の流れが悪くなる病気などです。

抗血小板薬は『アスピリン®︎』『バイアスピリン®︎』『バファリン®︎』などがよく使われています。

最近ではそれらに加えて『プラビックス®︎』『コンプラビン®︎』『プレタール®︎』などの新しいタイプの抗血小板薬も使われるようになっています。

抗凝固薬

抗凝固薬は、主に静脈の血栓の治療に使われる薬です。

心不全や静脈の血栓症、心臓に原因のある脳塞栓症、肺の血管が詰まる肺塞栓症などの病気の治療に使われています。

抗凝固薬は『ワーファリン®︎』が広く使われていましたが、近年では『プラザキサ®︎』『イグザレルト®︎』『エリキュース®︎』『リクシアナ®︎』などの新世代の抗凝固薬も普及しています。

血をサラサラにする薬を中断することで生じるリスク

もし、血をサラサラにする薬を使うのを止めるとどのようなリスクがあるのでしょうか。

一例として『ワーファリン®︎』に関しての研究報告があります。

『ワーファリン®︎』はとても歴史が長い上、年間数十万例に及ぶ処方がありますので、中断による合併症の報告も多いです。

『ワーファリン®︎』の中断リスクの研究では、抜歯目的で中断した患者さんのうち1%で重症の脳梗塞が発症しました。

しかも、発症した脳梗塞のタイプは、心臓に原因のある脳塞栓症でしたから、『ワーファリン®︎』を一時的にでも止めたことが原因であると考えられます。

すなわち、血をサラサラにする薬を中断するということは、元々の心臓や脳などの血管に血栓を作ってしまうリスクが高くなるわけです。

先ほどの報告について見方を変えれば、100人中断して99人は無事だったとも言えるわけですが、その1人に該当するのがあなたかもしれません。

もし、血をサラサラにする薬を中断しないで抜歯して問題ないのであれば、中断しないに越したことはないと思いませんか。

血をサラサラにする薬を中断しない理由

血をサラサラにする薬は、言い方を変えると血が止まりにくくなる薬です。

抜歯すると出血します。

血をサラサラにする薬を飲み続けながら、抜歯しても大丈夫なのでしょうか。

お口の出血は止血しやすい

医療事故があったら、たちまち新聞に載ってしまう昨今、抜歯をして血が止まらなかったという報道って見たことありますか?

実は、血をサラサラにする薬を飲んでいても、抜歯した後の出血の99.9%は十分止めることができます。

出血で一番怖いのは、出血しているところが見えない場合です。

言い方を変えると、見えるところからの出血ならコントロールも容易です。

抜歯後の出血は、お口からの出血ですから、出血しているところが直接目で見ることができます。

出血点がわかりやすいので、止血しやすく、それは、血をサラサラにする薬を使っている方の出血も同じです。

また、血が止まらないと体に危険が及ぶため、血が止まる体の機能は10以上あります。そのため、必ず止まるようになっています。

血栓ができるリスクを減らす

現在、使われている血をサラサラにする薬の作用持続時間は長くても14日、短いものなら半日弱ですが、中断すると血栓が再発して脳や心臓などに重大な病気を引き起こすリスクが生まれます。

止血が容易な出血のリスクと、脳や心臓の病気の再発のリスクを天秤にかけた場合、どちらを選ぶか、答えは明白です。

循環器病学会も血をサラサラにする薬を飲み続けながら抜歯するのが望ましいとしています。

その他の歯科治療は?

抜歯は、一般的な歯科治療で最も出血のリスクが高い処置です。

抜歯以上に出血のリスクが高い歯科医療は、腫瘍摘出術や腫瘍切除術、顎骨の骨切り手術など、病院で受ける治療が大半を占めます。

抜歯以外でお口から出血する歯科治療はほとんどなく、強いて言えば歯石の除去くらいでしょうか。

したがって、血をサラサラにする薬を飲んでいても、通常の歯科治療であれば問題となることはまずありません。

まとめ

今回は、抜歯と血をサラサラにする薬についてお話ししました。

血をサラサラにする薬は、『抗血小板薬』『抗凝固薬』と呼ばれる薬で、血栓を予防する目的で使われています。

どちらも血を止まりにくくする働きがありますが、

①抜歯後の出血は、出血点がわかりやすい

②止血が容易

③血栓ができるリスクの方が怖い

などの理由から、原則的には中断しないことがすすめられています。

当院でも、さまざまな病気をお持ちの方が歯科治療を受けにいらっしゃいます。

血をサラサラにする薬を飲んでいらっしゃる方も珍しくありません。

血をサラサラにする薬を処方されている方の治療経験も多く、そのような方で、歯科治療に不安のある方は当院でぜひご相談ください。

※当院では、国民皆歯科健診という国の医療政策の方向性が示される前より、歯の健康だけでなく、全身的な健康維持の面から予防歯科に積極的に取り組んでいます。

定期的に行う健診や、予防歯科へのサポートをさせていただきます。

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