こんにちは。野原歯科医院院長の野原行雄です。
本日は、親知らずがない人がいる理由についてお話しします。
親知らずは、斜めに生えていたり、横倒しになっていたりと、まっすぐ生えていない方がほとんどです。
ところが、中には親知らず自体がそもそも存在していないという方もおられます。
親知らずが痛みの原因かもしれないと疑ってレントゲン写真を撮ってみると、親知らずがなく驚かれました。
どうして親知らずがないのかお尋ねになりましたが、歯がないのを不思議に思うのはごもっともです。
今回は、親知らずがない人がいる理由についてお話しします。
生えてこないとは?
まず最初にご説明しておかなければいけないのは、今回のテーマの定義です。
”親知らずが生えてこない”とは、親知らずがそもそも存在していないという意味です。
例えば、完全に埋まっていて全く見えていない親知らず、私たち歯科医師のいう完全埋伏という状態にある親知らずは含まれていません。
今まで抜いたことがないのに、レントゲン写真に全く写っていない親知らずという意味です。
親知らずが生えてこない理由、それは親知らずの『退化』です。
退化する親知らず
人の身体が退化すると聞くと、驚かれる方もおられるかもしれません。
実は、人の身体にはいろいろ退化した部分があり、よく知られているのはしっぽです。
また、犬や猫が耳を動かすところはよく目にしますが、人間では耳を動かす筋肉はあるにはあるのですが、ほとんど機能しなくなっています。
このように、人体には退化した部分がいくつかあり、実は親知らずも退化傾向にあることが明らかになっています。
親知らずが生えてこなくなったのも、親知らずの退化が関係しています。
歯の退化とは
歯の退化とは
①歯の大きさが小さくなる
②全体的に丸みを帯びて角がなくなる
③奇形の歯が出やすくなる
④そもそも存在しなくなる
などを生じた歯を指します。
実は、これらは親知らずに共通するキーワードです。
このことからも、親知らずは退化傾向にある歯と考えられています。
小さくなる親知らず
人類の進化の過程で、親知らずは退化傾向にあることが考古学の研究から明らかになっています。
アウストラロピテクスの時代、すなわち420万年前、人類はまだ誕生していません。
この頃は、猿人でしたが、現在の人類と異なり奥歯はかなり大きかった模様です。
しかも、後ろの奥歯ほど大きくなっていました。
ところが、230万年まえに人類の祖先である初期の原人が登場すると、奥歯が全体に小さくなっていました。
草食から肉食へ食事形態が変わったことや、石器などの道具や火を使うようになったことが関係していると考えられています。
そして、奥歯のサイズも奥の奥歯ほど小さくなり、親知らずもまた縮小していきました。
旧人、新人と進化を続け、現代人となった人類は、今もやはり親知らずは小さなままです。
このことから、親知らずは退化傾向にあると見なされています。
退化は今でも続いているのか
親知らずは、実は現在も退化傾向にあると考えられる向きもあります。
退化しているかどうかの判断は、親知らずの欠如率、すなわち親知らずそのものがない人の割合を根拠にしています。
縄文時代の人骨を調べてみると、およそ5%ほどの人に親知らずが存在していなかったようです。
これが弥生時代になると20%ほどに上がります。
その後、緩やかに上昇を続け、明治時代や大正時代になり、親知らずがない人の割合は30%ほどとなり、ピークを迎えます。
ところが、昭和時代の後半から現在にかけては、20%かわずかに下回る水準となっています。
退化傾向にあったはずの親知らずが、最近はない人の割合が減っているという結果を示しています。
これはどういうことでしょうか。
退化とは、遺伝子の変化を伴う現象なので、最近になってから割合に変化がみられるということは退化という現象を否定するようにも思われます。
ただ、3000年の歴史の中でたかだか30~40年くらいの話です。
誤差の範囲とも考えられそうですし、そう捉えると退化傾向は現在に至っても続いていると考えることもできそうです。
余談ではございますが、このような退化を退行的進化という学者もいます。
親知らずがない人の歯並びの特徴
では、親知らずがあるのとないのでは、歯並びに何らかの違いは生まれるものなのでしょうか。
統計によりますと、左右の上顎下顎合計4本の親知らずがない人の歯は、上顎の前歯を除いて、全体的に大きくなるようです。
また、下顎の第二大臼歯という奥歯の噛み合わせ面の溝の形にも独特な特徴があるようです。
親知らずが元々ないことで、どうして他の歯に影響が出るのか因果関係はよくわかっていませんが、なかなか興味深いですね。
まとめ
今回は、親知らずが生えてこなくなった理由についてお話ししました。
親知らずが生えてこなくなった理由は、親知らず自身の退化です。
親知らずは、人間という種にとって必要のない歯となってきたようで、少なくとも縄文時代から退化傾向にあったようです。
ところが、退化傾向にある歯は小さくなるにもかかわらず、親知らずがない人のその他の歯は総じて大きくなる傾向が示されています。
この理由はよくわかっていません。
今もって、親知らずをはじめ、人間の歯はまだ神秘のベールに包まれているようですね。
当院では、親知らずの診断・治療も行っています。
もちろん、親知らずがあるかどうかも診断しています。
もし、『親知らずの具合がよくない』、『親知らずを抜いた方がいいのか迷っている』など親知らずでお困りの方は、当院でぜひご相談ください。
※当院では、国民皆歯科健診という国の医療政策の方向性が示される前より、歯の健康だけでなく、全身的な健康維持の面から予防歯科に積極的に取り組んでいます。
定期的に行う健診や、予防歯科へのサポートをさせていただきます。
大田区鵜の木にある野原歯科医院
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