こんにちは。野原歯科医院院長の野原行雄です。
噛み合わせの悪さによって歯を支えている歯周組織が破壊される歯周病が咬合性外傷です。
咬合性外傷を起こすと、歯を支えている歯槽骨という骨が吸収されて減っていき、やがて歯がぐらぐらと動き、最終的には抜けてしまいます。
歯科医師はどのようにして咬合性外傷を治していくのでしょうか。
今回は、咬合性外傷の治療法についてお話しします。
■咬合性外傷の治療のコンセプト
咬合性外傷を引き起こす悪い噛み合わせを外傷性咬合と言います。
外傷性咬合は、それが原因で歯周病を引き起こすことはありませんが、いったん歯周病になった場合に、歯周病を悪化させる要素です。
したがって、咬合性外傷の治療の目的は、外傷性咬合を取り除き、歯周組織にとって安定的なかみ合わせを獲得することで、歯周組織を守ることにあります。
■咬合性外傷の治療法
咬合性外傷が疑われたからといって、いきなり咬合性外傷の治療に取り掛かるわけではありません。
まずは、スケーリングやルートプレーニング、PMTCにより歯周基本治療を行います。
その上で、咬合性外傷の症状が認められた場合に、咬合性外傷の治療を開始します。
具体的な方法は、『咬合調整』『歯冠形態修正』『暫間固定』『歯周治療用装置』『ブラキシズムの治療』『矯正歯科治療』に分けられます。
咬合調整
動いている歯を少し削って噛み合わせを合わせ、噛み合わせの力を減らして、歯周組織を安静化することを咬合調整といいます。
咬合調整は、動いている歯を対象とした処置です。
動きが少なく、しっかりとしている歯は、噛み合わせがおかしいとしても、咬合調整の対象とはなりません。
歯冠形態修正
歯の歯冠部分の形に異常があり、それが原因で咬合性外傷を引き起こしている時に行われるのが歯冠形態修正です。
咬合調整とは異なり、横向きの力が加わる部分を中心に削ります。
歯冠の形の一部分を整えることで、噛み合わせの力を分散させ、咬合性外傷を解消します。
ただし、歯周組織の炎症が落ち着くと、歯の位置が正常な位置に戻ることがあるので、炎症症状がみられる場合は、炎症の緩和を優先し、炎症が落ち着いたのちに咬合調整や歯冠形態修正を行います。
暫間固定
咬合調整を行なっても、咬合性外傷が治らない場合や、歯がグラグラと大きく動いている場合に行われるのが暫間固定です。
暫間固定は、動いている歯を隣の歯と接着剤などを利用してつなげることで、噛み合わせの力を分散させ、かつ歯周組織の安静を図ります。
暫間固定は、文字通り『暫間(しばらくの間)』固定です。
永久に行うものではありません。
どれくらいの期間、固定を続けるかは、歯周組織の損傷程度や歯周病の広がり方などによって決まります。
なお、暫間固定には条件があり、まず暫間固定を行う前に咬合調整をしっかりと行わなくてはなりません。
また、暫間固定をすることで、プラークコントロールが難しくなってはいけません。
定期的に暫間固定装置に異常がないかどうか、噛み合わせはどうなっているか、プラークコントロールはしっかりとできているかなどをチェックする必要もあります。
歯周治療用装置
被せ物や詰め物などの形が不適切なために、歯周病を引き起こしている場合に、噛み合わせや見た目を回復させることを目的に応急的な被せ物治療を行うことがあります。
この時に用いられる一時的な被せ物のことを歯周治療装置と言います。
歯周治療装置を装着すると、噛み合わせや見た目の回復効果だけでなく、噛み合わせの力を分散させることができるので、刺繍組織を安定化させることができます。
歯周治療装置は、治療期間が長期に渡ると予想される重症な歯周病の治療に用いられます。
すぐに終わるような軽症例では必要ありません。
ブラキシズムの治療
ブラキシズムとは、必要がない時に、上下の歯を擦り合わせたり、食いしばったり、カチカチを噛み合わせたりする癖のことです。
したがって、食事の時に上下の歯を噛み合わせることは、ブラキシズムには含まれません。
ブラキシズムがあると、歯に噛み合わせの力が過度に加わり、歯周組織の咬合性外傷を引き起こしてしまいます。
現時点では、ブラキシズムを解消する治療法は確立されていません。
マウスピースを作って、噛み合わせの力を分散させたり、咬合調整をして噛み合わせのバランスを整える治療など、ブラキシズムによって生じる症状の軽減を目的とした治療が行われています。
矯正歯科治療
歯並びそのものが悪く、それによって咬合性外傷を起こしていることが明白なときは、矯正歯科治療で歯並びを整えて、歯周病を治療します。
しかし、歯周病が進行し、歯槽骨がかなり減ってしまった場合に矯正治療を行うと、さらに悪化してしまうことがあります。
ですが、矯正歯科治療を受けて歯並びがきれいになると、プラークコントロールがしやすくなり、歯周組織を安定化させることができます。
■まとめ
今回は、咬合性外傷の治療法について詳しくご説明しました。
咬合性外傷の治療法は、『咬合調整』『歯冠形態修正』『暫間固定』『歯周治療用装置』『ブラキシズムの治療』『矯正歯科治療』の6つです。
咬合性外傷を治療すれば、歯周病の進行を抑え、歯周組織の安静が図れます。
歯周病治療というと、スケーリングやルートプレーニング、PMTCなどの歯のクリーニングに目が行きがちですが、外傷性咬合を解消する治療もとても大切です。
プラークや歯石を取り除くだけでなく、噛み合わせも歯周病を引き起こす要因となっている場合は、歯科医院で咬合性外傷の治療も受けるようにしてください。
大田区鵜の木にある野原歯科医院
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