こんにちは。野原歯科医院院長の野原行雄です。
本日は、磨きにくい親知らずのケア方法についてお話しします。
親知らずとは、最後に、一番奥に生えてくる前から数えて8番目の歯です。
多くの場合、抜歯しますが、生え方によっては抜歯しなくて済むこともありますし、そもそも生えてこない人もいます。
しかし、なかなか磨きにくいので虫歯や智歯周囲炎(親知らずの歯周病)になってしまい、結局抜歯になることも珍しくありません。
そこで、今回は、残せる可能性のある親知らずを少しでも長持ちさせるために、磨きにくい親知らずのケア方法についてお話しします。
親知らずとは
年齢としては18歳から24歳までに生えます。
医学的には3番目の大きな奥歯ということで第三大臼歯とよばれています。
名前の由来は、平均寿命が50歳だった昔、親が亡くなってから生えてきたので、親知らずと呼ばれるようになりました(諸説あり)。
英語ではwisdom tooth(智恵のついた頃に生えてくる歯)とよばれ、日本語の別名である智歯という名前もここからついたのではないかと言われています。
親知らずの生え方
親知らずがまっすぐ生えているという方はあまりいないように感じます。
まっすぐな生え方
親知らずも普通の歯と同じように真っ直ぐ生えてくることもあります。
このような場合は、歯磨きできれいな状態を保つことができれば、あえて抜歯する必要はありません。
ただし、一部歯ぐきに埋まったままになっている場合は、抜歯することもあります。
斜めや横に向いた生え方
親知らずの生え方で多いのが、この斜めに、もしくは横向きに倒れた生え方です。
逆向きになっていることもあります。
歯磨きがしにくく、虫歯になったり腫れたりするリスクが高くなるため、抜歯します。
すべて埋もれている生え方
歯肉から全く顔を出さないこともあります。
歯肉が完全に覆っている場合は、腫れたり虫歯になったりしない限り、そのままにしておくことも多いです。
低く生えている
上顎の親知らずに多いのですが、手前の歯の高さまで生えてこなかったり、後ろ向きに生えたりすることもあります。
親知らずのリスク
親知らずに起こりやすいリスクについてご説明します。
虫歯や炎症を起こしやすい
親知らずは、まっすぐ生えていることがほとんどありません。
一見して真っ直ぐ生えているように見えても、一部歯肉が覆っているという場合がほとんどです。
しかも、最奥の歯なので、歯ブラシも届きにくい上に、きれいに磨くのも大変です。
そのため、他の歯と比べて虫歯や歯周病を起こすリスクがとても高くなっています。
特に、親知らずの歯周病に関してだけは智歯周囲炎という特別な病名がついていることもその裏返しです。
膿がたまってくる
特に斜めや横向きの親知らずに多いのですが、傾いた親知らずの歯冠の下側に膿がたまってくることがあります。
多くの場合、痛みや腫れなどの自覚症状はなく、レントゲン写真を撮影して初めて気がつく場合がほとんどです。
この膿が前に広がってくると、手前の歯を支える骨が減り、グラグラしてきたり腫れたりする原因になります。
口臭の原因になる
親知らずと手前の歯との間がきれいに磨けていないと、その隙間に細菌が繁殖するようになります。
その結果、口臭を生じることもあります。
親知らずのケアの仕方
では、親知らずのケアの方法にてご紹介します。
大きく開けない
親知らずは、もっとも後ろに生えている歯です。
大きくお口を開けると磨きやすそうに思いますが、実はそうではありません。
下顎の場合、お口を大きく開けると、頬がピンと張ります。
上顎の場合は、筋突起という下顎の骨の前側の頂上が親知らずの横に移動してきます。
このため、大きくお口を開けるとかえって磨きにくくなります。
そこで、お口を開けるときはあまり大きく開けないようにするのがポイントです。
基本は歯ブラシを使ったケア
基本となるのは、やはり歯ブラシを使ったブラッシングです。
使用する歯ブラシは、ヘッドが小さめタイプがおすすめです。
45度くらいの斜め方向から歯ブラシを入れるようにしましょう。
歯ブラシの動かし方は、大きく動かすとえづいてしまう可能性があるので、小刻みに動かすようにしてください。
手前の歯との間はデンタルフロスで
親知らずと手前の歯との間もきれいに磨く必要があります。
デンタルフロスは、糸巻きタイプはコストが低くていいのですが、指に巻きつけて親知らずのあたりに入れるのはとても難しいです。
そこで、選んで欲しいのが、Y字型ホルダータイプのデンタルフロスです。
歯の並びに沿ってまっすぐに入れて、デンタルフロスを親知らずと手前の歯との間に入れて、デンタルフロスの糸を歯に擦るようにして歯の表面をきれいにしてください。
歯間ブラシを使う場合は、SSSなどの最も細いタイプが適していますが、親知らずとその手前の歯との間に入れるのはとても難しいです。
無理に入れると歯茎を傷つけるリスクもあります。
このため、歯間ブラシよりY字型のデンタルフロスの方がおすすめです。
タフトブラシで仕上げをしよう
歯ブラシが使いにくいという方は、タフトブラシという特殊な歯ブラシもおすすめです。
タフトブラシは、毛先が筆のようにコンパクトに作られている歯ブラシです。
毛先が小さいのでえづきにくいのも利点です。
タフトブラシは、歯ブラシで磨いた後の仕上げ用としておすすめです。
鏡で親知らずを見てみて、磨き残しの部分を狙って使ってみてください。
上顎の親知らずは、残念ながら鏡ではなかなか見えません。
舌触りなどで磨き残しの有無を確認するといいでしょう。
磨き残しの部分を見つけたら、タフトブラシを鉛筆を持つような感じで握り、磨き残しの部分に当ててください。
そして、あまり強く当てすぎないように気をつけながら、小さな動きで歯を磨いてください。
奥の奥なので、歯磨き粉をつけるとえづいてしまうかもしれないので、必ずしもつける必要はありません。
歯肉が覆っているところのケア
歯肉が親知らずの一部を覆っている場合、普通の歯ブラシではまず磨けません。
そのようなときも、タフトブラシがおすすめです。
歯と歯肉の隙間に、タフトブラシの毛先を入れるようにして、小刻みに動かして磨いてください。
まとめ
今回は、親知らずのケア方法についてお話ししました。
親知らずには他の歯と違い、きちんと生えていることが稀で、多くの場合抜歯になります。
もし、まっすぐに生えているなどの理由で残せそうな親知らずも、虫歯や炎症のリスクは他の歯よりも高いため、より慎重なケアが必要です。
親知らずを磨くときのポイントは、
①あまり大きくお口を開けない
②ヘッドが小さめの歯ブラシを選ぶ
③歯ブラシの動きは小さく
④歯間ブラシよりデンタルフロス
⑤歯肉が覆っているところなど、細かなところはタフトブラシを
などです。
当院では、親知らずを含めたお口全体の歯磨き方法のご説明もしています。
もちろん、歯並びはみなさん異なりますから、ひとりひとりの歯並びに適した方法をお話ししています。
奥歯がどうしてもきれいに磨けない、奥から口臭がするなど気になる方は、当院でぜひご相談ください。
※当院では、国民皆歯科健診という国の医療政策の方向性が示される前より、歯の健康だけでなく、全身的な健康維持の面から予防歯科に積極的に取り組んでいます。
定期的に行う健診や、予防歯科へのサポートをさせていただきます。
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