こんにちは。野原歯科医院院長の野原行雄です。
歯周病が、悪化することで化膿して歯ぐきが腫れるのとは異なり、慢性的に長期にわたって歯ぐきがふくれる病気があります。
それが歯肉増殖症です。
歯肉増殖症は、どうして起こるのでしょうか。
今回は、歯肉増殖症についてご紹介します。
■歯肉増殖症とは
歯肉増殖症は、歯ぐきがいろいろな原因によって正常以上に硬くふくれてくる病気です。
細菌感染など、化膿して歯ぐきが腫れたわけではないので、抗菌薬を処方しても解消することはありませんし、切開しても膿は出ません。
■歯肉増殖症の症状
歯肉増殖症は、まず歯と歯の間の歯ぐきから始まります。
それが歯ぐき全体に広がり、重症化すると歯冠全体を覆うほどになります。
歯肉増殖症の多くは、触ると硬いゴムのような弾力性のふくれた歯ぐきになりますが、歯周病によって炎症を起こしている場合は、腫れたときのような硬さの歯ぐきになります。
歯肉増殖症を起こすと、歯と歯ぐきの隙間である歯周ポケットが深くなります。
歯周ポケットが深くなった部分は、歯みがきがしにくくなるので、歯ぐきが赤く腫れたり、出血しやすくなったりします。
■歯肉増殖症の種類
歯肉増殖症は、症状や原因から3種類に分類されます。
単純性歯肉増殖症
単純性歯肉増殖症は、歯ぐきの組織が増殖したことで起こる歯肉増殖症です。
単純性歯肉増殖症の原因としては、口呼吸による歯ぐきへの刺激などが考えられています。
歯肉線維腫症
上下顎の歯ぐき全体が大きくふくれる歯肉増殖症です。
歯冠が歯ぐきで覆われてしまうほどになることもあります。
薬物性歯肉増殖症
薬によって歯肉増殖症が起こることがあります。
原因としては、てんかんの治療薬であるフェニトインや高血圧症や狭心症の治療薬のニフェジピン、免疫抑制剤のシクロスポリンAなどが知られていますが、歯肉増殖を引き起こす可能性のある薬として、このほかに300種類弱もあると言われています。
歯肉増殖症を引き起こす割合は、フェニトインの服用患者さんの50%ほど、ニフェジピンの服用患者さんの15〜20%です。
シクロスポリンAでは成人で25〜30%、子供さんではなんと70%以上とされています。
■歯肉増殖症の問題点
歯肉増殖症になるとどのような問題が起こるのでしょうか。
歯周病を悪化させる
歯肉増殖症になると、歯周ポケットが深くなります。
深くなった歯周ポケットの内部は、歯みがきがしにくい空間となってしまいます。
歯周病の原因である歯周病菌は、歯の表面についたプラークという白いカスのようなものの中にいますが、プラークは歯周ポケットの内側にも付着します。
歯肉増殖症で深くなった歯周ポケットの内部にもプラークはつきます。
ここを起点として歯周病が発症・進行しますので、歯周ポケットが深くなるのは歯周病を悪化させる要素です。
見た目が悪くなる
歯肉増殖症を起こすと、歯と歯の間の歯ぐきを中心に、こんもりと盛り上がってきます。
http://www.hozo.or.jp/memer/ulicatio/joural/file/vol57_o6/477.pdf奥歯は見えにくいのでそうでもないのですが、前歯に歯肉増殖症が起こると、前歯の見た目が非常に悪くなってしまいます。
■歯肉増殖症の治療法
現在、歯肉増殖症に対して歯科医院ではどのような治療が行われているのでしょうか。
歯周基本治療
歯周基本治療とは、プラークコントロールを主とした一般的な歯周病治療のことです。
具体的には、スケーリングとルートプレイニング、ブラッシング指導(歯みがき方法の指導)を行います。
スケーリングとは歯石を取り除く処置、ルートプレイニングとは歯根の表面を滑沢な状態に磨き上げる処置です。
歯周病の原因は、歯の表面についたプラークの中にいる歯周病菌です。
プラークを取り除くプラークコントロールをしっかりと行うことで、歯周病菌を減らすことが歯周病治療の基本となります。
歯石はプラークが古くなって石のように硬くなったもののことで、その表面は非常にデコボコとしておりプラークがつきやすくなる温床となっています。
歯石は、歯ぐきの上側にも、歯ぐきの下の歯根の表面にもつきます。
そこで、スケーリングとルートプレイニングで歯石を取り除いてきれいな状態にして、プラークがつきにくくするのです。
それと同時に、歯みがき方法も指導して、日常の歯みがきによりプラークが取り除けるようにするのです。
薬物性歯肉増殖症であっても、多くの場合、時間はかかりますが歯周基本治療で治ってきます。
歯周外科治療
中には歯周基本治療で改善しにくい場合もあり、そんなときには歯周外科治療が検討されます。
歯周外科治療にはいろいろな種類がありますが、歯肉増殖症に対して行われるのは歯肉切除術です。
歯肉切除術は、局所麻酔の下に行われ、硬く盛り上がった歯ぐきを切除して、歯ぐきの形を整えます。
薬剤の変更
薬物性歯肉増殖症の場合、医科の主治医に相談して可能であるなら原因薬剤を別の種類に変更してもらうこともあります。
■まとめ
今回は、歯ぐきがこんもりとふくれてくる病気、歯肉増殖症についてご紹介しました。
歯肉増殖症は3種類ほどありますが、中でもてんかんの治療薬や高血圧症の治療薬などによって起こる薬物性歯肉増殖症がよく知られています。
治療法は、いずれの歯肉増殖症もまずプラークコントロールを中心とした歯周基本治療が行われます。
歯肉増殖症の多くはこれで改善されますが、改善が難しい時は歯肉切除術などの歯周外科治療が行われます。
てんかんの治療薬や高血圧症の治療薬を服用していて、慢性的に歯ぐきがふくれている場合は、歯肉増殖症の可能性がありますので、一度歯科医院で診てもらうことをおすすめします。
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