突然の歯肉のトラブル(歯周病の緊急処置治療)

こんにちは。野原歯科医院院長の野原行雄です。

歯周病の症状が強く、痛みや腫れが激しい場合は、歯周病が原因であっても歯周病の治療よりも優先して、症状の緩和に取り掛からなければなりません。

これを歯周病の緊急処置といいます。

今回は、歯周病の緊急処置についてお話しします。

■歯周膿瘍の処置

膿瘍(のうよう)とは、化膿して膿がたまった状態のことで、歯ぐきにできた膿瘍を歯周膿瘍と言います。

歯周膿瘍は、単に歯ぐきが腫れて痛くなっているだけではありません。

歯を支えている歯槽骨など歯周組織も急速に破壊されています。

したがって、歯周膿瘍は早めに処置しなければなりません。

歯周膿瘍の原因

歯周膿瘍の多くは、歯と歯ぐきの隙間である歯周ポケットが化膿することで起こります。

特に深い歯周ポケットや歯石で蓋されたような歯周ポケットに起こりやすいです。

歯周ポケット以外の原因としては、歯根の破折も挙げられます。

歯周膿瘍の処置

歯周膿瘍に対する処置は、薬物治療・切開・抜歯などがあります。

・薬物治療

ペニシリン系やマクロライド系などの抗菌薬が処方されます。

・切開

膿瘍に触れるとブヨブヨとしている場合は、切開して膿の出口(排膿路)を作ります。

切開しただけだと、自然に塞がってしまうこともあり、排膿路をしっかりと確保したい場合に切開したところにガーゼなどを詰めて、塞がらないようにすることもあります。

歯周ポケットの淵に近いところにできた歯周膿瘍の場合は、歯周ポケットの上部を切り取って排膿路を作ります。

どちらの場合も、局所麻酔の注射をしてから行いますが、残念ながら麻酔の効きはあまり良くない上、注射そのものもなかなか痛い場合が多いです。

・抜歯

歯周膿瘍を生じた歯が、全周にわたり歯を支える歯槽骨が破壊されているような場合や、歯根が折れている場合は、歯を残すこと自体ができないので、抗菌薬の投与で炎症が改善されたのちに抜歯となります。

■止まりにくい異常出血に対する処置

歯ぐきに炎症が起こると出血します。

もちろん、歯ぐきからの出血の原因は炎症だけでなく、全身的な病気が原因となって起こることもあります。

そのため、歯ぐきからの出血を認める場合は、その原因が何なのか、異常なものではないのかを見極めなければなりません。

歯ぐきの炎症による出血

歯周病で歯ぐきが強く腫れている場合に、歯みがきなどの刺激でたくさん出血することがあります。

ですが、このケースは異常出血とは言いません。

歯ぐきの腫れが原因の出血は、1回の出血量は多くても、比較的早期に止まるからです。

外科処置後の出血

抜歯などの外科処置を受けた後に、治りの途中で血餅(けっぺい)とよばれるカサブタが剥がれたり、傷を歯ブラシなどで刺激したりした場合に、出血し、しかもなかなか止まらなくなることがあります。

中には、傷口の近くの小さな動脈を傷つけて出血してくることもあります。

このような出血を認めた場合には、原因を探し出して止血処置を行わなければなりません。

全身的な病気による出血

歯ぐきからの異常出血を引き起こす病気としては、急性白血病や血友病などが挙げられます。

多くの場合は、歯ぐきから異常出血を起こしかねない病気を持っていることを患者さん自体が知っているので、問診票をみれば知ることができます。

しかし、急性白血病はそうではなく、血液検査をして初めてわかることも珍しくありません。

どちらにしても、全身的な病気によって起こされた歯ぐきからの異常出血は歯科医院での対応は難しいので、病院歯科などを紹介することになります。

■歯の神経と関連した炎症の処置

歯周病と歯の神経は、一見すると何の関連性もなさそうですが、そうではありません。

歯周病と歯の神経の炎症が合併することもあります。

一例を挙げると、上行性歯髄炎(じょうこうせいしずいえん)という歯の神経の炎症です。

これは、歯周ポケットが深くなり、歯の神経の付近にまで及ぶことにより、歯髄炎を起こす病気です。

歯髄炎とは、虫歯が歯の神経の付近にまで及ぶと起こる病気で、いわゆる虫歯の痛みの原因です。

ところが、上行性歯髄炎では虫歯でなくても歯の神経が痛くなります。

歯周ポケットがさらに深くなり、歯根の先にまで達すると、今度は歯の神経が壊死し、それに伴う痛みが生まれます。

このように歯周病が原因で生じた歯の神経の炎症に対しては、歯周病の治療に先行して歯の神経の痛みをとる治療が行われます。

■噛み合わせの処置

歯周病が進行すると、歯を支えている歯槽骨が減っていきます。

歯槽骨が減った歯で硬いものを噛むと、咬合性外傷という歯周病の一種を起こすことがあります。

咬合性外傷とは、強い噛み合わせの力が歯に加わることによって歯周組織が傷つけられる歯周病です。

このような咬合性外傷を受けた歯は、グラグラと動く上に、軽く噛むだけでも痛みが生じ、食事に支障をきたすようになります。

そこで、動いている歯を隣の歯とくっつけて、安静を図るようにします。

動き幅があまりも大きい場合は、抜歯します。

■まとめ

今回は、歯周病治療に先立って行われる緊急処置についてお話ししました。

多くの方は、歯周病治療=歯石の掃除など歯のクリーニングと考えておられるのではないでしょうか。

それは確かにそうなのですが、歯ぐきの症状などによってはすぐに取り掛かることができません。

そんなときは、歯周組織を守るためにも今回お話ししたような緊急処置が優先となります。

歯のクリーニングを希望して歯科医院を受診しても、すぐにしてくれないときがあるのは、こうした理由が背景にあるのです。

大田区鵜の木にある野原歯科医院

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