こんにちは。野原歯科医院院長の野原行雄です。
妊娠した方に生じる歯周病があるのはご存知でしょうかそれは、妊娠性歯肉炎です。
妊娠性歯肉炎と普通の歯肉炎はどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、妊娠性歯肉炎についてご紹介します。
■妊娠性歯肉炎とは
妊娠性歯肉炎とは、妊娠中の女性によくみられる歯肉炎です。
統計調査によってかなりの幅がありますが、妊娠女性の10〜70%ほどの頻度で起こるとされています。
■妊娠性歯肉炎の原因
ホルモンバランスの変化
妊娠性歯肉炎の原因は、プロゲステロンという女性ホルモンが増えることにあります。
プロゲステロンが体内で増えることで、血管壁の性質が変わり、血液成分などの透過性が良くなることが原因とされています。
ただし、プロゲステロンが増えるからといって、必ず妊娠性歯肉炎になるというわけではありません。
歯ぐきを腫らしてしまう何らかの刺激があって、初めて妊娠性歯肉炎が発病します。
つまり、妊娠したことによって、組織の代謝が異常を起こし、歯ぐきがさまざまな刺激に敏感に反応するようになり、歯ぐきが腫れると考えられています。
妊娠性歯肉炎に関連性の高い細菌
歯周病は、歯周病菌とよばれる細菌が原因で起こる病気です。
この点は妊娠性歯肉炎も同じですが、妊娠性歯肉炎の場合は、プレボテラ・インターメディアという細菌の関与が強いとされています。
■妊娠性歯肉炎の症状
妊娠性歯肉炎と言いますが、症状そのものは普通の歯肉炎とほとんど同じで、歯ぐきの腫れや痛み、歯みがきをした時の出血などが主な症状です。
多くの場合、妊娠5〜20週目ごろから歯ぐきの腫れや出血がみられるようになります。
そして、妊娠32週目ごろになると口臭も伴うようになってきます。
■妊娠性歯肉炎で注意しておかなければならないこと
妊娠中に歯周病になると、その影響は母体だけでなく胎児にも及びます。
それは、早産や低体重児出産のリスクです。
妊娠している女性の体内では、出産の時期が近づいてくると、プロスタグランジンという物質が通常の10〜30倍も分泌されるようになります。
プロスタグランジンが引き金となり、分娩が始まるのです。
ところが、プロスタグランジンという物質は、歯周病による歯ぐきの炎症を抑えることを目的にに、歯周病によっても生み出されます。
分泌される目的は異なりますが、プロスタグランジンという物質には変わりがないので、歯周病によって作られたプロスタグランジンによって、子宮の収縮が促されます。
そのため妊娠性歯肉炎には、早産や低体重児出産のリスクがあるのです。
妊娠性歯肉炎は、適切な治療を受ける必要があります。
■妊娠性歯肉炎にならないようにするためには
妊娠性歯肉炎にならないようにするためには、普通の歯周病と同じく妊娠中もしっかりとプラークコントロールをすることが基本となります。
歯みがき
プラークコントロールとは、歯の表面についたプラークとよばれる白いカスのようなものを取り除くことです。
歯周病の原因菌はこのプラークの中にいるので、プラークコントロールがとても大切とされています。
プラークコントロールを確実にするためには、毎食後の歯みがきをていねいにすることです。
歯の表面だけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使って歯と歯の間まできれいに磨いてください。
ですが、つわりがひどくてなかなか歯が磨けないようなときは、無理に磨く必要はありません。
体調に応じて無理なく歯みがきをしてください。
もし、歯ブラシを入れるという行為自体がしんどいときは、子供用のヘッドの小さな歯ブラシに替えてみるのもいいでしょう。
歯科医院での歯のクリーニング
日常の歯みがきで取りきれないプラークや歯石は、歯科医院で専用の器械を使って、きれいに取り除いてもらいましょう。
歯のクリーニングを受けるのに適した時期は、妊娠16〜28週(妊娠中期)と限られています。
タイミングを失わないように、注意しましょう。
受診の時は、母子手帳を忘れないで持っていってください。
水分補給
妊娠すると、ホルモンバランスの変化により、唾液の分泌量が減ってきます。
唾液には、お口の中の細菌を減らす抗菌作用や汚れを洗い流す洗浄作用、初期虫歯を治す再石灰化作用などがあります。
唾液の分泌量が減少しお口の中が乾燥すると、こうした唾液の作用が発揮できなくなり、お口の中に、歯周病菌が繁殖する温床を生み出してしまいます。
水分補給をまめに行い、お口の乾燥を予防しましょう。
■妊娠性歯肉炎の治療法
妊娠性歯肉炎は、出産が終わると治ってきますが、だからといって放置してなりません。
早産や低体重児出産のリスクが高まるだけでなく、出産後の歯周病の悪化のリスクにもなるからです。
妊娠性の歯肉炎の治療は、予防法と同じくプラークコントロールが中心となります。
プロスタグランジンは、発痛物質という痛みに関連した物質です。
歯ぐきの腫れた時に歯石を取り除いたり、歯の表面を磨いたりすると痛いので、出来るだけ痛みが出ないように注意しながら、無理がないように行います。
普通の歯周病では、歯ぐきが腫れて痛い時には抗菌薬や鎮痛薬を処方しますが、妊娠中の場合は、胎児への安全性に注意して選ばなければなりません。
なお、歯科治療で用いられる局所麻酔の注射は問題ありません。
使用する量はごくわずかですし、注射を受けた部位で分解されるので、胎児にも影響しません。
■まとめ
今回は、妊娠性歯肉炎についてご紹介しました。
妊娠性歯肉炎は、妊娠中のホルモンバランスの変化によって生じる歯肉炎です。
症状自体は、普通の歯周病とほとんど同じで、歯ぐきの腫れや出血です。
ですが、だからといって放置していると、早産や低体重児出産のリスクが高まります。
もし、妊娠中に歯ぐきの腫れや出血などの症状を認めたら、一度歯科医院を受診して相談されることをおすすめします。
そして、妊娠中も無理のない範囲でいいですので、ていねいな歯みがきでプラークコントロールを行い、妊娠性歯肉炎を予防しましょう。
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