歯が長くなった?(歯肉退縮)

こんにちは。野原歯科医院院長の野原行雄です。

「歯が大きくなったように見える「歯の付け根が見えるようになってきた」それは、歯ぐきが痩せてきた、下がってきたというサインです。

歯ぐきの痩せを、歯科医学的には『歯肉退縮(しにくたいしゅく)』といいます。

歯肉退縮は、歯周病の症状の一つです。

歯肉退縮はどうして起こるのでしょうか。

今回は、歯肉退縮の原因やその問題点などについてご説明します。

■歯肉退縮とは

歯肉退縮とは、歯の周りの歯ぐきが、歯根の先の方向に向かって痩せていき、歯根が露出してしまった状態のことです。

歯肉退縮には2種類あり、肉眼的に歯ぐきが痩せた『見かけ上の歯肉退縮』と、刺繍ポケットに隠れて見えない『隠れた歯肉退縮』があります。

歯周病の治療を受けた結果、歯ぐきが痩せてしまったというようなケースは、病的な状態だった歯ぐきが引き締まり、『隠れた歯肉退縮』が現れた結果と考えられます。

歯肉退縮は、加齢的に増えていく傾向があり、子どもでは10%もいませんが、50歳を超えるとほぼ100%に歯肉退縮が認められるようになります。

■歯肉退縮の原因

どうして、歯肉退縮は起こるのでしょうか。

不適切な歯みがき

歯肉退縮を起こす最も一般的な原因が、硬すぎる歯ブラシを使った正しくない磨き方と言われています。

歯ぐきを強く擦ることで、歯ぐきがすり減ってしまうわけです。

この場合の特徴は、歯みがきそのものは方法が悪いとはいえ、磨けているため、歯ぐきの炎症は比較的少ないという点がみられます。

歯の位置が悪い

歯が、歯の並びから外側(頬側)にずれて生えている場合、歯肉退縮を起こしやすくなります。

この場合は、矯正治療をして歯の位置を他の歯と同じような位置にすると、歯肉退縮が自然に解消したという報告もあります。

歯周病

進行した歯周病によって、歯ぐきは少しずつ減っていきます。

矯正歯科治療

矯正歯科治療は、歯並びをきれいに整える治療ですが、これを受けたのちに歯ぐきが下がってしまうことがあります。

これは前歯に起こりやすい傾向があります。

この原因として、動かした歯による骨への過剰な負荷が挙げられます。

歯をきれいに並べる場合には、歯のサイズと骨のサイズのバランスが取れている必要があります。

もし、骨のサイズの方が小さければ、歯を抜いてバランスを整えます。

仮に、歯と骨のサイズがギリギリという場合に、抜歯をせずに歯を動かしていったとします。

すると、歯の並びが骨の許容範囲を超えてしまうことがあり、その場合に歯ぐきが下がってしまいます。

また、歯を動かすときに無理な力をかけるのも、骨に大きな負荷がかかるので、歯ぐきが下がる原因となります。

■歯肉退縮の問題点

では、歯肉退縮によって生じる問題点をみていきましょう。

見た目が悪くなる

歯肉退縮を起こした歯は、歯根が露出するために歯が長くなったように見えてしまいます。

そのために、特に前歯に歯肉退縮が起こると、前歯が大きくなったように見え、見た目が悪くなってしまいます。

知覚過敏を起こしやすくなる

歯根は象牙質でできていますが、象牙質は軟らかく、エナメル質と比べてすり減りやすい性質があります。

歯肉退縮によって露出した歯根の象牙質もすり減りやすいので、歯根の厚みが薄くなることで知覚過敏を起こすリスクが高まります。

むし歯になりやすくなる

歯根は、本来は歯ぐきの中にあり、露出しているところではないので、歯冠のようにエナメル質という骨よりも硬いもので覆われ、保護されているわけではありません。

そのため、歯根は歯冠と比べて、むし歯菌の作り出す酸に溶かされやすく、よりむし歯になりや
すい傾向があります。

プラークコントロールが悪くなる

プラークコントロールとは、歯の表面についているプラークを取り除き、きれいな状態にすることです。

歯肉退縮を起こした歯は、歯根部分が露出するわけですが、他の歯と同じように磨いていたのでは、露出した歯根部分がきれいに磨けません。

その部分だけ注意をして磨くようにしなければ、プラークが溜まり続けることになり、むし歯や歯周病になりやすくなります。

■歯肉退縮の治療法

いったん痩せた歯ぐきを元に戻すのは、今のところ非常に困難です。

そのため、これ以上歯肉退縮が進行しないようにするのが中心となります。

歯みがき指導

歯肉退縮の原因のトップが不適切な歯みがきですので、患者さんに適した歯ブラシ、歯みがきの方法を説明して、歯ぐきがそれ以上痩せないようにします。

歯周病治療

歯周病が原因で歯肉退縮を起こしている場合は、歯周病治療を行い、歯ぐきを健康な状態にします。

外科手術(当院で診断し、大学病院などの高度医療機関にご紹介しております)

歯肉退縮を起こした周囲の歯茎に切開を加えたうえで延ばして、露出した歯根を覆う歯肉弁移動術や、他の部分から歯ぐきを採取して、歯肉退縮部に移植する遊離歯肉移植術という外科的な治
療法があります。

ですがどちらの方法も、歯肉退縮した部分にしっかりと歯ぐきを定着させるのは難しく、次第に後戻りを起こして痩せていくことが多いです。

矯正歯科治療(当院で診断し、大学病院などの高度医療機関にご紹介しております)

歯が歯の並びからはみ出している場合は、矯正歯科治療を行って、歯の位置を整えると歯肉退縮が自然に治ってくる場合があります。

■まとめ

今回は、歯ぐきが痩せてしまう、下がってくる歯肉退縮についてお話しさせていただきました。

歯肉退縮の多くは、不適切な歯磨きが原因で起こります。

歯肉退縮によって歯根が露出すると、歯の見た目が悪くなるだけでなく、知覚過敏やむし歯などの歯の病気を起こるリスクが高まります。

いったん生じた歯肉退縮は、治療するのが困難です。

もし、歯ぐきが痩せてきた、下がってきたと感じたら、早めに歯科医院を受診して、原因を探り、それ以上、歯ぐきが痩せていかないようにすることをおすすめします。

大田区鵜の木にある野原歯科医院

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