こんにちは。
野原歯科医院院長の野原行雄です。
今回は「転んで歯が抜けた時の対応」を説明させて頂きます。
転倒や事故などで顔を打つと、打ち所によっては歯が抜けてしまいます。
スポーツでケガをして歯が抜けてしまうこともあります。
これを歯の脱臼といいます。
抜けた歯は、元に戻すことはできるのでしょうか。
歯が抜けたとき、私たちはどのようなところに注意しなければならないのでしょうか。
今回は、歯が抜けたときにどうすればいいのかをわかりやすく解説します。
■抜けた歯はどうするの?
転んで歯を打つと、歯が抜け落ちてしまうことがあります。
抜けた歯はもうダメなのでしょうか。
実は抜け落ちた歯は、うまくいけば再び戻すことができる可能性があります。
抜けた歯を守るために守ってほしいことがあります。
乾燥させない
抜け落ちた歯は乾燥させないように気をつけて下さい。
これが最も大切なことと言えるかもしれません。
学校などの教育機関であれば、保健室に歯牙保存液という専用の保存液があるかもしれません。
歯牙保存液が使えればベストですが、手に入らなければ抜けた歯は、理想的には体温くらいの温度に温めた生理食塩水につけて歯科医院に持っていって下さい。
生理食塩水が手に入らない場合は、牛乳を利用して下さい。
なお、生理食塩水の塩分濃度は0.9%です。
500[ml]のミネラルウォーターに5[g]の塩を混ぜると、塩分濃度は1%になります。
生理食塩水はご自身で作ることも難しくないので、作って歯をつけて持っていくのもいいでしょう。
なお、これは余談ですが、生理食塩水の塩分濃度の水は、目につけてもしみないそうです。
牛乳もなく、水と塩しかない場面では、水に少しの塩を入れて、目に落としてしみるかどうか試しながら生理食塩水を作ることも可能です。
戦時中、医薬品がなくなったときには、このようにして生理食塩水を作っていたそうです。
牛乳などが手に入らないときは
抜けた歯は乾燥させないことが大切です。
歯牙保存液や生理食塩水などが理想的ですが、それだだけでなく牛乳なども手に入らないときは、少なくともラップやビニール袋に入れて、少しでも乾燥しないようにして下さい。
できるなら、30分以内に牛乳などを入手して歯を漬けるようにして下さい。
ゴシゴシ洗わない
抜け落ちた歯に砂利やゴミがついていることは珍しくありません。
草木の破片がついていることもあります。
心理的には、歯の表面についた砂利やゴミは不潔そうですから、洗ってきれいにしたくなるのは理解できるのですが、そのまま砂利やゴミがついたままの状態で持ってきて下さい。
歯根の表面には歯根膜という歯と骨をつなげる大切な役割を担っている人体のような薄い膜状の組織がついています。
これが残されているかどうかが、その歯がきちんと元に戻るかどうかのカギとなっています。
歯の表面についた砂利やゴミを取り除く過程で歯根膜が傷ついてしまったり、とれてしまったりすると、歯を戻してもくっつかなくなるリスクが生まれます。
抜けた歯についた砂利やゴミなどの汚れは洗わずにそのまま持ってくるようにして下さい。
口の中に入れてもいい?
抜けた歯を自分自身でお口に戻して、歯科医院に受診するのはどうでしょうか。
ご自身でお口の中に戻しても大丈夫です。
お口の中なら生理食塩水につけなくても歯が乾燥から守れます。
ただ、これには注意点があります。
抜けた歯を飲み込んでしまうリスクです。
飲み込んでしまうと、その歯は二度と使えなくなりますので、この点はくれぐれもご注意ください。
歯を持つときは
歯をつかんで持つときは、歯冠部分を持つようにして下さい。
歯根部分を掴むと、大切な歯根膜を傷つけてしまう可能性があるからです。
出血していたら
歯が抜けると、その場所から出血してきます。
ケガの具合のよっては、歯ぐきが裂けていることもあります。
出血しているときは、そのまま出血したままにすることなく、ガーゼなどを噛んで歯科医院を受診して下さい。
これを圧迫止血と言います。
たとえ歯ぐきが裂けていたとしても、ガーゼで圧迫していたら、たいていは止血できます。
なお、ガーゼを噛んだくらいでは、抜けた歯が戻らなくなることはありませんので心配しなくても大丈夫です。
受診の時期は?
出来るだけ早い時期に歯科医院を受診するようにして下さい。
何時間までなら大丈夫というデータはありませんが、早ければ早いほど、戻る可能性が高まります。
■歯牙保存液ってなに?
歯牙保存液とは、抜けた歯を保管するために最適な状態に調整された保存液です。
歯の保存液ともよばれ、市販されています。
歯が元の状態に戻せるかどうかは、歯根の表面についた歯根膜の状態にかなり影響されます。
生理食塩水や牛乳に歯を保存して歯科医院を受診するよりも、歯牙保存液は専用液ですから歯根膜の保護能力が高いです。
歯牙保存液を利用すれば、24時間くらいまでなら歯根膜を生きた状態に保ちながら、歯を保存できるとされています。
もし歯牙保存液が手に入るなら、歯牙保存液を利用した方が良いでしょう。
■まとめ
今回は、歯がケガをして抜けてしまった時の対応についてお話ししました。
最も大切なことは歯を乾燥させないこと、次に大切なのが、歯根膜という歯根の表面についている組織を傷つけないことです。
これらを守り、できるだけ早い時期に歯科医院を受診することをおすすめします。
大田区鵜の木にある野原歯科医院
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