歯が生えるときの痛み(萌出性歯肉炎)

こんにちは。野原歯科医院院長の野原行雄です。

歯肉炎や歯周病って、大きい子供や大人の病気と思っていませんか。

先日、保育園の年長さんの子供さんが歯が生えてきて痛いと言ってこられました。

親御さんは虫歯じゃないかと心配してこられたのですが、みてみると歯ぐきが腫れていました。

そうです、保育園や幼稚園に通っているようなお子さんでも起こる歯肉炎があるのです。

それが萌出性歯肉炎です。

今回は、小さなお子さんにも起こりうる萌出性歯肉炎についてご紹介します。

■萌出性歯肉炎とは

萌出(ほうしゅつ)とは、歯が生えてくるという意味です。

つまり、萌出性歯肉炎とは、歯が生えてくるのにともなって起こる歯肉炎のことです。

生え始めた乳歯や、第一大臼歯、いわゆる6歳臼歯、第二大臼歯など、新しく生えてくる歯にしばしば見られますが、乳歯の生え変わりとして生えてくる永久歯にはあまり起こりません。

■萌出性歯肉炎の原因

プラーク

歯が生えてくる時、その周囲の歯ぐきを押し除けるようにして生えてきます。

そのために、歯ぐきの形が変わり、食べかすやプラークがつきやすくなるのが原因で萌出性歯肉炎は起こります。

プラークとは、歯の表面についている白いカスのことです。

その正体は、細菌の塊です。

歯周病もむし歯も、どちらも細菌が原因で起こる歯の病気ですが、こうした原因菌はプラークの中に潜んでいます。

プラークがたくさんついているということは、細菌もたくさんついているということで、それだけ炎症を起こしやすいといえます。

したがって、萌出性歯肉炎の原因も、普通の歯周病と同じくプラークの中にいる細菌なのです。

歯や歯ぐきの形

歯は、時期が来たらすぐに生えるわけではありません。

生え始めてから完全に生え終わるまで、しばらく日がかかります。

その間は、一部は歯ぐきに覆われ、一部は露出した状態が続き、歯ぐきの形は理想的とはいえない形になります。

しかも、第一大臼歯や第二大臼歯は、噛み合わせの面に深い溝があるので、食べかすやプラークが入り込みやすくなっています。

深い溝の上に、歯ぐきが一部蓋をするような感じに乗り上げているわけです。

歯が新しく生えてくる時は、歯ぐきの形、歯の形、それぞれが歯肉炎を起こしやすい条件になっているわけですね。

■萌出性歯肉炎が生じやすい時期

萌出性歯肉炎は、歯が新しく生えてくるときに起こりやすい歯肉炎です。

乳歯が生えてくる3歳までの時期や、第一大臼歯が生えてくる6歳前後、そして第二大臼歯が生えてくる12歳前後に生じやすい傾向があります。

■萌出性歯肉炎の症状

歯肉炎というと、歯ぐきの腫れや出血などが多いですが、萌出性歯肉炎の場合は、歯ぐきの腫れに加え、むず痒い、歯みがきのときに痛がるという症状が見られます。

小さなお子さんの場合、腫れたり痛くなったりしても、それを表現して伝えることができません。

もしも特定の歯に限って歯みがきをいつも以上に嫌がるなら、もしかしたら歯ぐきが腫れているからなのかもしれません。

その場所の歯茎の色や形を、一度見てあげてください。

■萌出性歯肉炎の治療法

経過観察

萌出性歯肉炎は、生えてくる途中の歯茎の形に原因がある歯肉炎です。

生え終わったら、自然と治ってきます。

ですから、基本的には、経過観察、つまり様子を見るというのが第一選択になります。

外科的切除

稀に腫れなどの症状を繰り返すような場合があります。

その時は、局所麻酔の注射をして、歯の上に盛り上がっている歯ぐきを取り除くこともあります。

薬物治療

歯周病で腫れた場合、抗菌薬を処方して炎症の緩和を図ることがありますが、萌出性歯肉炎では抗菌薬を処方する必要性はまずありません。

また、ステロイドの軟膏を処方する必要もないです。

■萌出性歯肉炎の予防法

萌出性歯肉炎の予防法は、歯が生えてくるときに、歯ぐきを含めた歯の周辺をきれいな状態に保つことです。

それは、歯みがきです。

第一大臼歯も第二大臼歯も一番奥にあたる歯ですから、歯ブラシを入れることそのものが難しいです。

さらに一部が歯ぐきで覆われているとなるとなおさらです。

ですから、親御さんの目で歯磨きができているかどうかチェックし、仕上げ歯磨きも欠かさず行うようにしてあげてください。

■まとめ

萌出性歯肉炎は、歯が生えてくる際に歯ぐきが腫れたり、痛くなったりする歯肉炎です。

その原因は、歯が生えてくるときに歯の形が変わり、プラークや食べかすがたまりやすくなることにあります。

プラークや食べかすによって炎症が起こり、歯ぐきが腫れてくるというわけです。

したがって、萌出性歯肉炎の予防法は、歯ぐきの形や歯の位置の関係で歯みがきがしにくいのですが、歯をしっかり磨いて出来るだけきれいな状態に保つことです。

歯が生え終わると自然に治ってきますが、腫れを繰り返すような場合は、歯ぐきを切除して歯みがきしやすいようにすることもあります。

もし、お子さんの歯が生えてくるときに、そんな症状が見られるなら、一度歯科医院で相談されることをおすすめします。

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