こんにちは。野原歯科医院院長の野原行雄です。
本日は、乳歯の歯並びをずれないように守る保隙装置についてお話しします。
乳歯は、一定の年齢になるとグラグラと動き始め、やがて抜けて永久歯に生えかわります。
ですが、適切な年齢になるまでに乳歯が抜けてしまうと、永久歯の歯並びが悪くなってしまう原因になります。
そのようなときに用いるのが保隙装置(ほげきそうち)という治療器具です。
保隙装置とはどのような治療器具なのでしょうか。
今回は、乳歯の歯並びを守り、永久歯の歯並びが悪くならないようにする保隙装置についてお話しします。
保隙装置とは
保隙装置とは、乳歯が本来の生えかわりの時期よりも早く抜けてしまったときに、乳歯があったスペースが無くならないようにするための治療器具です。
保隙とは、『隙間を保つ』と書きますが、ここでいう『隙間』とは、乳歯があるべきスペースを指す言葉というわけです。
永久歯に生えかわる年齢、つまりスペースを確保し続ける必要がない時期になると、保隙装置は取り除かれます。
ですから、保隙装置は、大人に用いられるものではありません。
保隙装置が必要となる理由
歯は虫歯や歯周病、ケガなどいろいろな理由でなくなります。
乳歯だけでなく、永久歯もそうなのですが、歯が無くなると、その隙間を埋めようとして、自然に隣の歯が倒れかかってきたり、噛み合わせている歯が伸びてきたりします。
すると、歯並びが変わっていくわけですが、乳歯にこの現象が起こると、抜けた乳歯の後に生えてくる予定の永久歯が生えてくるに必要なスペースがなくなってしまう恐れがあります。
永久歯は、生えてくるべきスペースが足りていようが、不足していようが、お構いなく生えてこようとします。
もし、乳歯が早く抜けてしまったことで、永久歯の生えてくるスペースが足りなくなっていたら、永久歯がきちんと並ぶことができなくなりますから、歯並びが悪くなる可能性が生まれます。
そこで、保隙装置を装着することで、永久歯が生えてくるスペースが無くならないようにして、永久歯がきれいに並ぶようにしようというわけですね。
保隙装置の種類
保隙装置と一言でいっても、実はいろいろなタイプがあります。
バンドループ
バンドループは奥歯の乳歯に用いる保隙装置です。
バンドループは、金属製のバンドとそこからのびるワイヤーで構成されています。
乳歯には金属製のバンド部分を利用して装着します。
ワイヤーが抜けた歯の前側の歯に当たることで、奥歯の乳歯が抜けた部分に向かって倒れ込むのを防ぎます。
クラウンループ
クラウンとは、被せ物のことです。
バンドループと似ていますが、クラウンループは、乳歯用の金属製の被せ物とそこからのびるワイヤーで構成されています。
バンドループは、装着するべき乳歯に虫歯がない場合に用いられますが、言い方を変えると大きな虫歯ができた乳歯には使えません。
乳歯も虫歯の穴が大きい場合は、乳歯冠という乳歯用の金属製の被せ物で治療しますが、この被せ物を利用します。
乳歯用の被せ物に、バンドループのようにワイヤーを装着して、抜けた部分に向かって奥の乳歯が倒れ込むのを防ぐわけです。
インレーバー
インレーとは、小ぶりの金属製の詰め物のことです。
クラウンを装着するほど虫歯が大きいわけではないけれど、プラスチックで詰めるのは難しいという場合の虫歯治療に用いられます。
永久歯だけでなく、乳歯の虫歯治療でも使われます。
このインレーに、バーというタイプの金属製の棒状の突起物を装着し、このバーで乳歯が抜けたところに向かって倒れ込まないようにします。
クラウンにする必要がない大きさの虫歯が生じた乳歯の保隙装置として用いられます。
ディスタルシュー
先ほどお話ししたバンドループやクラウンループなどは、原則的には抜けた歯の後ろの乳歯に装着する保隙装置です。
では、第二乳臼歯という最も奥の乳歯が抜けてしまったときは、どうするのでしょうか。
その答えが、ディスタルシューです。
これは、第二乳臼歯の後ろに生えてくる第一大臼歯、いわゆる6歳臼歯がきちんと生えてくるように、そして前に向かって倒れ込まないようにするのが目的で使用されます。
そのために、ディスタルシューは、第一乳臼歯という抜けた第二乳臼歯の前の乳歯に被せ物を装着し、そこから先端が下に向かって丸まったバーがのびるという構造をしています。
舌側弧線装置
舌側弧線装置とは、両側の第一大臼歯に装着するバンドと歯並びの内側を走る太めのワイヤーで構成される治療器具です。
舌側弧線装置は、リンガルアーチともよばれ、矯正治療でも用いられるのですが、第一大臼歯が生えて以降に、乳歯の奥歯が早く抜けてしまったときの保隙装置としても使われます。
小児用義歯
小児用義歯とは、入れ歯タイプの保隙装置です。
入れ歯といえば高齢者というイメージがありますから、お子さんに入れ歯タイプの保隙装置というと驚かれる方も多いことでしょう。
先ほどまでご紹介した保隙装置は、原則的に保隙すべきスペースが1〜2本程度とごくわずかな場合に用いられるものです。
例えば、交通事故などにより前の乳歯が何本も抜けてしまったような場合には使えません。
そのようなときに用いる保隙装置が、小児用義歯です。
入れ歯タイプというだけあって、他の保隙装置と異なり、取り外しできますし、食べ物も噛めます。
歯に生じた隙間による発音の乱れも防ぐことができます。
まとめ
今回は、乳歯が適切な時期よりも早く抜けてしまったときに用いる保隙装置についてお話ししました。
保隙装置は、あくまでも永久歯がきちんと生えてくるスペースを確保するためのものです。
決して、永久歯の歯並びをよくする矯正治療装置ではないので、お間違えないようにしてください。
そのために、永久歯が生える時期になると、保隙装置は役割を終えます。
乳歯が早く抜けたあと、いずれは永久歯が生えてくるだろうと放置していると、永久歯がズレたところから出てくる原因となります。
当院は、お子さんの虫歯治療だけでなく、成長発育に応じたこのような治療も行なっております。
もし、お子さんに乳歯の抜けた時期に不安があるような場合は、当院でぜひご相談ください。
大田区鵜の木にある野原歯科医院
野原歯科医院は東京にある、多摩川線鵜の木駅より徒歩6分のところにございます。
提携駐車場は12台ございます。
野原歯科医院は、東京都大田区鵜の木周辺にお住いの方の歯の健康を第一に考えております。
東京都大田区鵜の木のかかりつけの歯医者として、お気軽にぜひ、ご相談ください。