歯肉がただれている(急性壊死性潰瘍性歯肉炎)

こんにちは。野原歯科医院院長の野原行雄です。

歯周病は慢性的な経過をたどる病気なので、時間をかけてゆっくりと進行していきます。

ところが、中にはそうではなく、急激に歯ぐきがただれ、しかも歯ぐきが壊死したり、強い痛みが襲ってきたり、講習がキツくなったりするタイプの歯周病があります。

急性壊死性潰瘍性歯肉炎という歯周病がそれです。

これはどのような歯周病なのでしょうか。

今回は、急性壊死性潰瘍性歯肉炎について解説させていただきます。

■急性壊死性潰瘍性歯肉炎とは

急性壊死性潰瘍性歯肉炎とは、その名前の通り、急激に歯ぐきが壊死し、ただれてくる病気です。

この病気は、タバコをよく吸う人や、強いストレスを継続的に受け続けている人、免疫力が低下している人、睡眠が十分取れていない人、栄養不足に陥っている人の間などで起こりやすい傾向があります。

■急性壊死性潰瘍性歯肉炎の別名とその由来

かつては、塹壕性歯肉炎とよばれていました。

この名前の由来は、第一次世界大戦の西部戦線に遡ります。

当時、西部戦線では英仏軍と独軍が塹壕を張り巡らして対峙していました。

その塹壕線に配置された若い兵士の間に、歯ぐきが腐ったり、ただれたりする症状が現れました。

兵士たちは塹壕の中という環境下で寝起きし、食事をとり、時に敵の砲撃に晒されるという生活を送っていました。

彼らの間で広がっていったので、塹壕性歯肉炎とよばれたのです。

その後の研究で、普通に生活している人の間でもみられることがわかったので、名前が変わっていったのです。

■症状

急性壊死性潰瘍性歯肉炎は、急激に症状が現れます。

お口の症状

歯と歯の間を中心とし、そこから歯ぐき全体に広がっていく歯ぐきの壊死や、ただれが起こります。

壊死とは細胞や組織が死んでしまう状態を指します。

そのため、壊死が生じた歯ぐきは、強い炎症状態になるので、歯ぐきにかなり強い痛みが生じま
す。

また、歯ぐきが炎症を起こして腫れているので、歯みがきをしたときにはお口全体が真っ赤に染まるほどの出血も認めます。

歯ぐきの細胞が死んでいくので、強い口臭も伴います。

全身的な症状

身体全体がだるくなってしまいます。

また、熱が出ることもあります。

お口全体の痛みのために、食事も食べにくくなります。

顎の下から首にかけてリンパ節が腫れてきます。

■原因

歯周病菌に、強い継続的なストレスや疲れ、栄養不良、免疫力低下などの全身的な要因が関連して起こると考えられています。

急性壊死性潰瘍性歯肉炎を起こしたところには、スピロヘータというタイプの細菌がたくさんみられることから、この細菌の関与も疑われています。

■検査

急性壊死性潰瘍性歯肉炎は、その特徴的な所見を認めることで診断を下します。

症状によっては、血液検査やお口の中の細菌検査を行うこともあります。

■治療法

急性壊死性潰瘍性歯肉炎の治療は、お口に対する局所的治療と、全身に対する全身的治療に分けられます。

局所的治療

急性壊死性潰瘍性歯肉炎では、一般的な歯周病治療のような歯石の除去などから取り掛かると
はありません。

歯ぐきの痛みがとても激しく、出血も多いことから、まずはプラークコントロールから行います。

ですが、PMTCとよばれる専用の器械を使ったプラークコントロールを行うと、出血や痛みを増大させてしまいます。

そこで、まずは毛先の軟らかめな歯ブラシを使って、優しく歯みがきを行い、歯の表面をきれいな状態にもっていきます。

また、炎症を改善させる効果のあるうがい薬を使って、歯ぐきの状態を安静化させます。

それに加えて、歯ぐきの炎症を改善させる目的で抗菌薬の処方、歯ぐきの痛みに対しては鎮痛薬を処方します。

全身的治療

疲れやストレス、栄養不足も急性壊死性潰瘍性歯肉炎を発症させる要素なので、これらの管理もとても大切です。

まずは、しっかり体を休め、睡眠を十分とるようにしてもらいます。

食事は、栄養バランスを考えて食べて欲しいのですが、痛みがとても激しい場合は食事そのものが難しくなるので、噛まなくても良い液体の栄養剤を処方することもあります。

ストレスの軽減を図ることも大切です。

また、タバコを吸う方の場合は、禁煙を試みる必要もあるでしょう。

■まとめ

今回は、急性壊死性潰瘍性歯肉炎についてお話しさせていただきました。

急性壊死性潰瘍性歯肉炎は、普通の歯周病が徐々に進行していく経過をたどるのと異なり、急激に症状が進行し、強い痛みや出血、口臭を認めます。

また、発病にはお口の細菌だけでなく、疲れやストレス、栄養不足などの全身的な影響が強く関連しているのも、急性壊死性潰瘍性歯肉炎の特徴です。

治療は、お口の中を清潔にすること、炎症を抑えることから取り掛かります。

まずは、軟らかめの歯ブラシを使ったプラークコントロールと並行して、抗菌薬と鎮痛薬による炎症の緩和を図ります。

そして、疲れやストレス、栄養不足などの全身的な要因をチェックし、それらを取り除き、体力の回復を図ります。

もちろん、喫煙者の場合は、禁煙も大切です。

急性壊死性潰瘍性歯肉炎は、普通の歯周病よりも症状が激しいのですが、体力がしっかりとしている方には起こりにくい病気です。

普段の生活の中で、偏らない栄養バランスのとれた食事、睡眠時間の確保、休息など体調管理をしておくことで、予防を図りましょう。

もし、急性壊死性潰瘍性歯肉炎であげたような症状が疑われる場合は、早めに歯科医院で診てもらうようにしてください。

大田区鵜の木にある野原歯科医院

野原歯科医院は多摩川線鵜の木駅より徒歩6分のところにございます。

提携駐車場は12台ございます。

野原歯科医院は、大田区鵜の木周辺にお住いの方の歯の健康を第一に考えております。

大田区鵜の木のかかりつけの歯医者として、お気軽にぜひ、ご相談ください。