こんにちは。野原歯科医院院長の野原行雄です。
むし歯予防にはフッ素がとても効果的です。
フッ素はむし歯予防効果があるとわかっていも、どうやってフッ素を利用すればいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
そんな方は、普段お使いの歯磨き剤を見てみてください。
フッ素が入っていませんか?
多くの方は、歯磨き剤を通してフッ素を日常的に利用しています。
ですが、フッ素の濃度まで考えて歯磨き剤を選んでいますか?
近年、フッ素濃度が1,450mと高配合した歯磨き剤が発売されるようになりました。
今回は、フッ素を高濃度に配合した歯磨き剤についてご紹介します。
■フッ素の効果
高濃度歯磨き剤のお話しをする前に、まずはフッ素の効果を説明します。
フッ素は、『再石灰化の促進』『歯質の強化』『酸の産生抑制』の3つの効果でむし歯を予防します。
①再石灰化の促進
むし歯菌が作り出した酸によって歯が溶かされると、歯からカルシウムやリンが溶け出してしまいます。
フッ素には、唾液に含まれているカルシウムやリンを歯に再付着させるのを促進する働きがあり、この働きで酸に溶かされた部分を修復します。
②歯質の強化
歯の表面を覆っているエナメル質の成分とフッ素が結合することで、酸に溶かされにくい強い歯にします。
③酸の産生抑制
むし歯菌の働きを抑え、むし歯菌が酸を作りにくくします。
■積極的に推奨されるフッ素配合歯磨き剤
従来のフッ素の位置づけは、歯磨きの際の補助剤にすぎず、永久歯が生え終わる前まで使えばいいとされていました。
それが最近では、積極的なむし歯予防剤として位置付けられるように変わり、年齢に応じた濃度を乳歯が生えた後から生涯にわたって使用し続けることが推奨されるようになっています。
■高濃度フッ素配合歯磨き剤の解禁
我が国では、長い間歯磨き剤に含まれるフッ素の濃度は1,000mが上限でした。
950mの歯磨き剤が多かったのはそのためです。
ところが、世界標準のフッ素濃度は1,500mでした。
ISO(国際標準化機構)では、歯磨き剤の含まれるフッ素濃度の上限を1,500mと定めていましたので、世界各国では日本よりも500mも高い歯磨き剤が使われてきたのです。
そんな中、我が国でもようやく平成29年3月17日付で厚生労働省から医薬部外品として承認を受けました。
日本だけがフッ素濃度が低かった理由は、今から100年ほど前、京都で水道水にフッ素を混ぜてそれを飲食に使う実験がなされた時に、それを飲食に使用した母親から産まれた子供に班状歯が出てしまい、厚生省がフッ素に対して過敏になった経緯があります。
フッ素に対してのWHOと厚生労働省の見解が常に相違があるのはそれが理由です。
■高濃度フッ素の効果
むし歯予防効果
WHO(世界保健機構)は、歯磨き剤に含まれるフッ素の濃度とむし歯予防効果について発表しています。
歯磨き剤にフッ素を配合した場合、そのむし歯予防率は23〜32%になります。
フッ素濃度1000m以上の歯磨き剤では、フッ素濃度が500m上がるにつれて、むし歯の予防効果が6%高まるということです。
フッ素配合歯磨き剤にはむし歯予防効果があるわけですが、1450m配合の歯磨き剤のほうが、よりむし歯予防効果が高いことが分かります
唾液中のフッ素濃度
フッ素濃度1,500mの歯磨き剤と、1,000mの歯磨き剤を使った後の、唾液の中のフッ素濃度を調べた研究があります。
これによりますと、1,500mの歯磨き剤では、1,000mのそれの2倍も高かったそうです。
歯磨き剤の濃度は1.5倍なのに、唾液の中のフッ素濃度の差は2倍にも広がるんですね。
■高濃度フッ素配合歯磨き剤の安全性
今回解禁された1,500mの歯磨き剤を大人用の歯ブラシの毛先全体に塗ったとしたら、およそ歯磨き剤の量は約1[g]になります。
これに含まれるフッ素の量は約1.5[mg]です。
一方、フッ素の体重当たりの急性中毒量は、2[mg/kg]とされています。
高濃度とはいえ、歯磨き剤を吐き出さず、使用量をまるまま飲み込んだとしても、普通に使う量では安全性に全く問題ありません。
■高濃度フッ素配合歯磨き剤の効果的な使い方
高濃度フッ素配合歯磨き剤をより効果的に使うために、推奨されている使い方をご紹介します。
①歯ブラシの毛先の半分以上の長さ分、つける。②歯磨きしている間は、出来るだけ吐き出さない。
③歯磨きした後のうがいは、およそ15[ml]のお水で、5秒程度を1回だけにとどめる。
④歯磨きした後は、2時間ほど食事を控える。
せっかく、高いフッ素濃度の歯磨き剤を使うなら、より効果的に使いたいものです。
ぜひ、実践してみてください。
■高濃度フッ素配合歯磨き剤の注意点
6歳未満は使用禁止
高濃度フッ素配合歯磨き剤は、むし歯予防効果がとても高い利点があるのですが、どの年齢でも使っていいわけではありません。
実は、『6歳未満の子供には使用してはならない』『そして手の届かないところに保管しておかなければならない』という注意点があります。
これは、高濃度フッ素配合歯磨き剤を使用することによって、『歯のフッ素症』という副作用が現れるリスクがあるからです。
歯のフッ素症とは
歯のフッ素症とは、かつては斑状歯ともよばれていた症状のことです。
これは、高濃度のフッ素が体内で形成中の歯のエナメル質に作用して、歯の表面に褐色の斑点が生じる病気です。
歯のフッ素症が起こるのは、5歳までの歯の発生期に高濃度フッ素が作用した場合に限られ、大人に高濃度フッ素が作用しても生じません。
■まとめ
今回は、1,500mの高濃度フッ素配合歯磨き剤について解説しました。
高濃度歯磨き剤は、従来の上限だった1,000mの歯磨き剤よりも高いむし歯予防効果を示しています。
1,500mでは発売されておらず、製造時の誤差を考慮して1,450mと少し低めの歯磨き剤として作られていますが、むし歯予防効果が高いことには変わりはありません。
食後の歯磨きの時には、ぜひ高濃度フッ素配合歯磨き剤を使って、むし歯を予防しましょう。
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